fbpx

「給与DXのエムザス」 給与とシステム両方を本業に約20年

社長とれんど考察

「 類推 > 教科書 」

2021年4月1日

■労働者襲う新たな産業革命
あなたは進歩を歓迎しますか。これは新聞に連載されているテーマの何回目かのタイトルです。第四次産業革命と言われるデジタル革命(DX)の黎明期にある現在、仕事や職業を取り巻く外部環境は激変しており、コロナ禍がそれをさらに加速させてしまいました。アメリカでは自動車メーカーの工場が廃止されたり、イギリスでは製造業のシェアが減り、その存在感の低下が顕著だとされます。もちろん我が国も同じ状況にありますので、働く者としては他人事ではありません。労働や雇用の問題は経済や社会情勢との密接に相関することですし、この分野を専門とする一人として考察してみました。

■コロナで加速する働き方改革
働き方改革といえば、労働時間の上限規制や有給休暇の五日以上の取得義務化など、主として企業側に新たなルールを求めるものだと思われてる様子でした。しかし、コロナ禍が違う意味を教えたように感じます。それが冒頭にある産業革命による働き方改革です。実はコロナ前から大企業は動いていましたが、コロナが未来を早めてしまったのです。経済の落込みが続くなか、大企業のリストラは着々と進行しています。新卒で入った会社に定年まで勤める働き方は徐々になくなっています。そして在職の社員に対しては、中身が分かったようでよく分からないジョブ型という働き方への改革を迫っています。

■企業が目指すジョブ型雇用
ジョブ型雇用というのは、予め契約により決められた職務を執り行うというもので、これに対するメンバーシップ型というものは、日本企業の多くが採用する職能制度を想定しており、会社が求める職務を柔軟に対応する働き方ということでしょうか。そんな単純な話ではないとは思いますが、いずれか一方というものがあり得るのかも疑問に思います。要は、言葉は新しくなっているようですが、実績主義とか成果主義という以前からあるようなものではないでしょうか。端的にいえば、年齢や勤続に応じて昇給する年功賃金からの脱却を目指しているのでしょう。これも企業の業績が伸びないことが原因だと思います。

■七十歳雇用
一方、医療や食品の充実により、寿命は伸びているようです。人生百年時代が来たとも言われています。企業もこの流れには逆らえません。真偽はともかく、年金財政が枯渇するなどと騒がれますので、政府も年金支給を遅らせたいようです。そこで大企業は制度としては七十歳雇用を受け容れる代わりに、リストラをマイルドに進めているのです。六十歳雇用でしたら定年までの数年間を我慢すれば雇用できましたが、さすがに七十歳雇用となると無理ということだと推察します。話は前後しますが、ジョブ型に変えて行こうとする理由の大きな一つがこれです。もちろんデジタル化として産業革命も大きな要素です。

■いつの時代も諸行無常
このような結構大きな変化の波を感じてしまうと、昔の人たちはどうしてたのかとか、他の人たちはどうするつもりだろうかと気になってくるものです。「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響あり。娑羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす…」で始まる平家物語の冒頭はいつの時代でも通ずる真理なのだと思います。社会人となった三十年前に遡って考えてみても色んなことが変化しています。駅の切符切りや高速道路の集金人などは象徴的ですが、他にもなくなったり少なくなった仕事は多いことでしょう。そう思うと、これからも職場の変化がなくなることなどあり得ないし、元々ないのが普通だとも思います。

■求められる類推スキル
来るべきデジタル時代にはどのような働き方になり、求められるスキルはどうなるでしょうか。産業が高度化してきた歴史から想像すると、無人化・自動化・省人化が進化することは間違ありません。つまり、進化、発展することを企画し、運営することに従事することです。職種としてみれば、アメリカの調査では、経営・マネジメント職が一番収入が高く、続いてコンピュータ・情報系でしたが、その職種なら全員ということはなく、学生のように、教科書に書いてある唯一絶対の正解を当てるような頭の良さではなく、点と点を線で結べるような、点から線を類推できるようなアナログ的な思考力が求められることでしょう。

■いつまでも続く生成発展
労働者襲う新たな産業革命、あなたは進歩を歓迎しますか。という問いかけには、歓迎しますと言いたいです。なぜなら一時的な停滞は別として、生成発展が止まることはないからです。やはり環境の変化に合わせて生きていくことのみが、唯一の変化への対応策だと思います。それは終わりのないことですから、年齢を重ねていくとしんどいことになります。だからこそ若いうちに仕込んでおくことが重要です。社会全体は豊かになりますが、人それぞれ自分の立ち位置は重要事項ですから、やはり先人の教えを守ることが良いでしょう。分かったら身につくわけではありませんが、これから自分自身に言い聞かせたいと思います。