「当事者意識 > 他人事」
2021年10月1日
■選挙の年
今年もコロナ禍の一年になりそうです。また、今年は選挙の年でもあります。これまで話題になった東京都議会や横浜市長などの選挙がありましたが、現在は次の総理大臣を決める自民党総裁選挙が終わり、来月には衆議院総選挙の行われる予定で、我が国の経営者・経営幹部である政治家の顔ぶれが決まります。他方、政治家の不祥事もたくさんあります。中にはこの人本当に政治家かと思わざるを得ない振る舞いや発言をする人も散見されます。非常に残念なことですがなぜこのようなことになるのか、やはり自分の立ち位置があやふやなのではないかと思わざるを得ません。そこで今回は、政治家はもちろんですが、経営者や経営幹部を対象とした当事者意識と他人事について考察してみました 。
■リクルートATI
圧倒的な当事者意識とは、リクルートさん発の概念です。社内では頭文字を取ったATIと呼ばれているそうです。ATIとは、目の前の仕事のことを自分事として捉える意識で、リクルートでは「お前どうしたいの」と問われ続けることで醸成されていくのです。入社したばかりで事業も全くわからない時期から全ての業務に対して当事者意識を持つように日々促されます。どんな仕事に対しても自分はどうしたいのかを考えることでただの作業が成長に繋がるようになってきます。こういうことは、学校ではあまり教えられないですし、もちろんテストにもでませんが、社会で重職に就くには必須のスキルだと思います。リクルート出身のベンチャー起業家で成功者が多いのは、社内で練られたATIが秘訣なのですね。
■重職心得箇条
江戸時代の儒学者佐藤一斉の書で、その第一条です。重職というのは、大事を取り扱うことが仕事です。そうでなければ重職と呼ぶ必要はありません。親しみを持っての行動と、軽々な行動とは自ずと違うものです。重職の一つの決定の誤りが、顧客に多大な迷惑をかけ、取引先にも無理なお願いをし、従業員を路頭に迷わせ、株主にも損失を与えることにもなり得ると分かると、その行動や言動は自ずと重厚でなければなりません。軽薄では全くダメで、威厳を伴っていなければなりません。重職としての己の役割をわきまえ、日々それに相応しいことを考え行動していれば、威厳は身に付いてくるはずです。重職者は“立っている処”の差で決まるのだということでしょうか。政治家にも読んでほしいですね。
■志(こころざし)は気の帥(すい)なり
孟子の言葉です。「志(こころざし)」とは心の中に自覚される鮮明な目標、それを成し遂げようとする強烈な意欲、それらが合体したものです。すなわち目標あるいは夢といったものは、あらゆる「気」、すなわちやる気、元気、根気、景気、勇気、強気、弱気、気力、気骨、気概などの「帥(すい)」つまり、源である、拠り所である、親分であるという意味です。そして、「志」とは、私事としての到達目標ではなく、大いなる価値を創造していくような次元の高いものであることです。近視眼的で、かつ個人的な野望とは相容れないものです。政治家、経営者や経営幹部はその組織の誰よりも、圧倒的当事者意識のもと、決意や実践を進めていくために求められる重要な要素だと思います。
■政治家の他人事
政治の世界で他人事と言えば、あの悪魔のような〇〇党政権っていう出来事を思い出します。あろうことか、我が国のトップである総理が軽々な思いつき発言で我が国を混乱に陥れたことは、記憶にまだ残っていることだと思われます。一連の混乱はまさに当事者意識の欠如であり人災でした。誰がやっても混乱するコロナ対策とは全然次元の違うことです。自分の立ち位置が分かっていれば絶対にできない発言であり行動でありました。そもそも政権交代が起こった選挙の時の某党のマニフェストには経済政策が一つもなかったと分析した方がいらっしゃいました。政治は経済であり、経済は政治なのです。お灸をすえたつもりがお灸をすえられるとは。やはり投票は冷静かつ客観的な判断が不可欠です。
■経営者や経営幹部の他人事
経営者や経営幹部とは国でいえば政治家みたいな仕事になろうかと思います。つまりメンバーの先頭に立ってけん引する役割なのであり、決して自分がやりたいことだけをやればいいというものではありません。もちろん自分がやりたい事、大きな目標はあって当然ですが、それは個人的なことではなく、組織的なものなので、多くの人に協力してもらわないといけません。社会もそうですが、組織もやはり多くの人との協働が必要です。それは妥協の産物でもあるかもしれません。目標を達成するためには、厳しい仕事や我慢、妥協をお願いする役回りが必要です。それが経営者であり経営幹部なのですが、間違ってそのポジションについてしまうと、いずれは修正されてしまうでしょう。
■努力より夢中
重職者には、圧倒的な当事者意識や志を持つことが求められるのは分かりますが、重職者といっても人間です。分かっていてもできないこともあることでしょう。通訳者の橋本美穂さんは、「努力」以上に強力なエンジンが「夢中」であると言われています。努力している人と夢中になっている人、行動は同じでも、ちょっとした意識、感じ方の違いによって得られるものが変わるからです。確かにビジネスでもスポーツでもレジャーでも夢中になるほど好きなことは努力を超えていますね、努力しろと他人に言われるまでもないという感じでしょうか。政治家なら、政治に夢中になれるか、経営者や経営幹部なら、ビジネスの中でもマネジメントに夢中になれるかが分岐点になりそうですね。それを見抜く目を持たなければなりません。